2-4.シリコンウエハーの製造Ⅲ

シリコンウエハーを製造するには

シリコンウエハーは中国やノルウェーなどから珪石を調達するところから始まります。珪石からシリコンを取り出し、多結晶シリコンを作ります。純度の高いシリコンができたらそこから単結晶シリコンを作り出し、これを円盤状に切断することでシリコンウエハーができあがります。

ケイ石からシリコンを作る

昔、ギリシャの哲学者は世界は土からできていると考えた人がいます。木や花、草は土から生まれるのであり、我々動植物は、死んだら土に還るので、そう考えたのも無理はありません。そうして突き詰めて考えてみると、パソコン(を含めるすべての創造物は)はもともとは地球の岩や土からできているといえます。パソコンを山に捨てると不法投棄で罰せられますが、パソコンそれ自体はもともと山から生まれた資源を焼いて練ってこねて出来上がったものなのです。なにを言っているかわかりますか?半導体もそのひとつで、もともとは山や海底に埋まっているシリコンから作られます。通常、シリコンは地表の岩石に約27パーセントも存在する元素ですが、普通はケイ石(二酸化シリコンSiO2)の形で存在しています。

ケイ石(SiO2)なので、ここからシリコン(Si)を取り出すためにはどうすればいいでしょうか。Oを取り出したいので、加熱することでC(カーボン)を加えてOを引き離してやろう、という方法をとります。

SiO2= Si +CO2

シリコン(Si)と二酸化炭素(CO2)に分かれますね。具体的には、カーボン電極を使った電気炉内に投入し、アーク放電を起こさせ1900℃の高熱で加熱し還元作用を起こさせます。この工程で98%の純度の高い金属シリコンが作りだされます。しかし、まだ目標の純度イレブンナイン99.999999999%という高純度には及びません。

多結晶シリコンを作る

詳しい説明の前に簡単に説明しときます。

①金属シリコンを砕く

②砕いたものを塩酸に溶かすとトリクロルシラン(SiHCl₃)ができる。

③このトリクロルシラン(SiHCl₃)を水素を箱に入れて加熱する。

④シリコン芯線を入れると、その周りに多結晶シリコンがひっつく。

こうしてできた金属シリコンを微細な粉状に砕いて塩酸に溶かすと、無色透明のトリクロルシラン(SiHCl₃)が得られます。これを蒸留・精製可能な限り高純度化し、多結晶シリコンを作ろうと試みます。非常にややこしいので書いている本人もわかりにくいと感じているのですが、一般に熱分解法として知られています。

高純度に精製されたトリクロルシランと超高純度の水素を反応器(ベルジャー)に入れ、通電加熱したシリコン芯線の表面に棒状の多結晶シリコンを析出・成長させます。この反応では芯線の温度、ガスの混合比や流量を制御します。多結晶シリコンは小さな単結晶シリコンの粒がたくさん集まったものですが、純度はイレブンナインと呼ばれ、99.999999999度の高純度化されています。

単結晶シリコンを作る

さて、多結晶シリコンができあがりました。これから単結晶シリコンを取り出します。取り出す方法はCZ法(Czochralski法=チョクラルスキ)FZ法(FloatingZone法=浮遊帯法)に大分されます。これについてもややこしいので簡略化されたものを書いておきます。特にCZ法が主流ですので、それについてだけ抑えておけばいいようです。

①多結晶シリコンを砕いて石英ガラスで作られたルツボに入れて加熱します。

②このときにP型を作りたいならホウ素(B)、N型を作りたいならリン(P)あるいはアンチモンをいれてやります。

③ピアノ線で吊り下げられた小さな種結晶(単結晶)を接触させ回転させながら徐々に引き上げて単結晶を成長させる。

CZ法

CZ法では超高純度の多結晶シリコンを砕いて洗浄した後、石英るつぼに入れて加熱炉で溶かします。このとき同時に微量の導電型不純物(添加材またはドープ剤と呼ぶ)を必要量だけ添加します。P型結晶を得るにはホウ素(B)を、N型結晶をつくるにはリン(P)やアンチモン(Sb)を添加し、不純物の添加量によって結晶の抵抗率をコントロールします。このシリコンの溶液に、ピアノ線でつりさげられた小さな種結晶(点結晶)を接触させ、回転させながら徐々に引き上げて単結晶を成長させます。この際の温度や引き上げ速度の調整で結晶の直径やさまざまな特性のものを作り出せます。なお、引き上げには、『引き上げ炉』を用い、アルゴンガスの中で行われます。成長した結晶は種結晶と同様、完全な単結晶となります。

シリコン単結晶に含まれる酸素の量は結晶特性ひいてはIC特性に大きな影響を与えますが、最近ではルツボの石英からシリコン溶液に溶け込む酸素を減らすため、溶液に地場を加えて対流を少なくしたMCZ法がウエハーの大口径かの後押しもあり、一般的に使われています。

FZ法

FZ法では、添加剤を加えたアルゴンガス中で、棒状の多結晶シリコンを高周波電圧を印加したコイルで帯状に溶かし、溶液部分に小さな種結晶を接触させてから、コイルを上下に移動し、棒全体を単結晶化させます。